猫が好きな人なら、飼い主のいない猫の姿を見ると、心が痛くなると思います。
人間の勝手な都合で捨てられたり、避妊や去勢をしないまま外飼いするような無責任な人のせいで増えてしまうお外の猫たち。
まともに生きられる猫はわずかです。
だからと言って、外にいる猫を保護して家猫にするのは簡単なことではありません。
せめて何かできることはないのかと考えてしているのが、避妊や去勢手術を受けさせて、一代限りの命を見守ってあげるTNRという活動です。
TNRは保護団体が行っている活動と思われていますが、個人でも行っている人は沢山います。
私自身も細々とですが、自宅周りで見かけた猫のTNRを経験しています。
はじめてTNRする時は、色んな方たちから情報や知識をもらいながらの挑戦でした。
色んな感情が混ざり合って、泣きながらTNRしたのを今もハッキリとおぼえています。
今回はその経験から、個人でTNRをしようと考えている方にお伝えできることをまとめています。
役に立たない情報もあると思いますが、参考になれば嬉しく思います。
TNRとは
TNRについては、ずいぶんと知られるようになってきましたが、それは猫に関心を持っている人の中でも限られています。
TNRとはTrap(トラップ)、Neuter(ニューター)、Return(リターン)の略です。
Trap(トラップ)は、捕獲機などを使い、猫を安全な方法で捕獲します。
Neuter(ニューター)とは不妊手術のことです。
メス猫の避妊手術だけじゃなく、オス猫の去勢手術も含まれます。
Return(リターン)は、猫が暮らしていた元の場所に戻すことです。
猫は自分のテリトリー内で暮らす生き物なので、元の場所に戻すことがTNRの前提です。
もしも捕獲した場所が猫にとって安全ではない場合は、保護をして里親を探す方法などを検討しなければいけません。
TNRした後の猫の生きる場所についても、しっかり観察する必要があるのだと思います。
個人でTNRをする準備
個人でTNRをしようと考えるのは、ほとんどの場合が自宅敷地内や自宅周辺に野良猫と思われる猫を見かけるようになったからだと思います。
私もそうでした。
敷地内を通り過ぎる猫を時々見かけていましたが、ある時から目が合って立ち止まり、そのうち敷地内で日向ぼっこして寝ている姿を見るようになりました。
安心できる場所だと思ったのか、頻繁に見かけるようになると愛着が湧いてきます。
ただ、子猫を生んでしまえば見て向ぬふりはできなくなると思い、悩んだ挙句TNRすることにしました。
その時の準備を順を追ってご説明します。
①写真を撮る
TNRする予定の猫の写真を撮影します。
スマホで構わないので、顔だけじゃなく全身の姿がわかるように撮影しておきます。
出来ればメスかオスか判別できるように、尻尾を上げた時の後ろ姿も撮影できると良いですね。
②近隣に聞き込みをする
個人でTNRする場合は、自宅周りで見かける猫なので近隣住民も知っているかも知れません。
もしかしたら、首輪をしていないだけで、どこかの外飼いの猫かも知れないので、念のために画像を見せながら近隣住民に問い合わせてみます。
飼い猫じゃなくても、近所の猫好きの方がすでに避妊手術をしている可能性もあるので、聞き込みしたほうが猫のためにもトラブル回避のためにも重要です。
③捕獲機を準備する
人間に慣れていない猫を捕獲するのは容易ではありません。
捕獲機がないと人間も猫もケガをするかも知れません。
捕獲機は、市販されているものを購入できます。
ただ、何度も使うわけじゃないので、借りる方法もあります。
たとえばお住まいの地域の動物愛護センターで貸し出ししている場合もあります。
野良猫の保護活動に協力的な動物病院でも貸し出していることもあるので、購入以外の方法を調べてみるといいでしょう。
④病院を探す
捕獲してからではなく、病院はあらかじめ探しておきましょう。
予約が必要な病院が多いのですが、野良猫のTNRだと伝えれば、前日や当日でも対応してもらえる病院もあります。
それが難しい場合は、何度かキャンセルをすることになりますが、事情を説明して協力してくれる動物病院を探しましょう。
もしも見つからない場合は、近くで保護活動をしている団体を探して相談してみるのも1つの方法です。
捕獲を手伝ってくれることもありますし、病院を紹介してくれることもあります。
ちなみに私は自宅から車で1時間以内の病院に片っ端から電話をして、事情を話して当日の午前中に連絡を入れれば予約ナシでも引き受けてくれる病院を3つ見つけておきました。
1つだけでは手術の先約があると断られるかも知れないので、3つ見つけておけば安心できます。
⑤自治体の助成制度を調べる
TNRは飼い主のいない猫をこれ以上増やさないために行うことなので、猫好きだけじゃなく猫が苦手な人のためにもなる活動です。
そういう面を考慮して、自治体では避妊・去勢手術への助成金制度を設ける地域が増えています。
飼い猫でも正しく避妊・去勢をしないままでは、多頭飼育崩壊を招くので、飼い主がいる猫でも助成する自治体もあります。
行政での助成制度がない地域でも、公益財団法人どうぶつ基金の無料不妊手術事業を利用することもできます。
詳しくはお住まいの自治体、またはどうぶつ基金へ問い合わせてみてください。
一般的には避妊手術は15,000円~30,000円くらいです。
去勢手術は5,000~15,000くらいが相場です。
日帰りの病院もありますが、一泊入院が多いと思います。
⑥餌付けをする
捕獲するまでには、ある程度の期間をかけて安心してご飯を食べられる場所だと認識させる必要があります。
警戒心の強い子は、見慣れない捕獲機があるだけで近寄らなくなるので捕獲する前に置いておきます。
自分の家の敷地内であればそのままでも構いませんが、敷地外に設置する場合は連絡先やTNRする旨を書いた紙を貼っておきます。
不審物だと思われないようにしましょう。
⑦捕獲機を設置する
TNRする予定の猫がご飯を食べに通ってくるようになれば、いよいよ捕獲機の設置をします。
警戒してなかなか入ってくれなくても、粘り強く待ちます。
私の初めてのTNRでは保護団体の方からアドバイスをもらい、香りの強いエサを置いて誘いましたが3日目にやっと捕獲できました。
不妊・去勢の必要性
TNRは、また元の場所に戻すのが原則です。
それは猫にとってリスクはありますが、不妊・去勢手術によって少しリスクが軽減されます。
メス猫の場合は、過酷な環境で子猫を生み、育てることが亡くなります。
繁殖期がないので、オス猫からの感染症のリスクが軽減できます。
オス猫の場合は、去勢することで繁殖期のケンカがなくなります。
ケンカによって猫エイズや白血病などの感染リスクが高まるので、オス猫も去勢手術をした方が良いのです。
さくら耳にする意味
TNRをして元の場所に戻す活動が全国に広まっているのは、耳をV字カットされた猫を見かけることでわかると思います。
手術時に麻酔が効いている間に、メス猫は左耳、オス猫は右耳の先端を小さくV字カットします。
まるで桜の花びらのような形の耳なので、さくら耳の猫ということで「さくらねこ」と呼ばれます。
さくらねこになると、「この子は不妊・去勢手術済だな」と見てわかります。
とくにメス猫の場合は、見ただけで手術済なのかわからないので、もしかしたらまた捕獲されてお腹を切られてしまう恐れがあります。
そういうことを防ぐためにも、さくら耳にする意味があるのです。
TNR後の見守り方について
これから個人でTNRを考えている方は、手術をして元の場所に戻した後のことも考えておいてください。
エサや水を与えるだけではなく、トイレのことで近隣に迷惑をかけないように工夫することも必要です。
家の中のようなトイレを準備するわけにはいかないので、ホームセンターで売っているプランターに砂を入れて外猫用のトイレを作ってみてください。
使ってくれないかも知れませんが、糞尿被害で近隣を困らせないためにも柔らかい砂を入れたプランターを自宅の敷地内に設置します。
トイレとして使ってくれるようになれば、糞尿のニオイ対策に使えるバクテリンというバクテリアを薄めて吹きかければ気になりません。
トイレのお世話まですれば、近隣には迷惑をかけないので、使ってくれるような工夫を考えてみましょう。
まとめ
どんなに猫好きでも、飼い主のいない猫を見つけるたびに保護して飼うわけにはいきませんよね。
TNRという方法が最善とは思いませんが、不幸な猫を増やさないために私たち人間ができる最低限のことではないかと思います。
野良猫と呼ばれる猫たちは、人間が無責任な飼い方をしたり、捨てられた猫が増えた結果です。
人間の仕業なので、人間が責任を持つべきですよね。
どうか気になっている猫さんがいるのなら、TNRを考えてみてくだい。